相続放棄のメリットとデメリット!相続放棄をした後の空き家はどうなる?

相続放棄をするかどうか、悩まれる人もたくさんいます。相続が発生したことにより、3か月以内に決断をしなければいけません。決断をせまられる人には短く感じることでしょう。

まずは、相続放棄のメリットとデメリットを知り、そのうえで決断をするべきではないでしょうか。

また、相続放棄をした場合でも、面倒なことが起きることもあります。それが、すべての相続人が相続放棄した後の空き家問題です。

空き家を相続放棄した人が「相続放棄をしたから関係ない」と思われているのならば、考え方を改める必要があります。

この記事では、相続放棄のメリットとデメリットを解説していきます。また、相続放棄による空き家問題の落とし穴についても説明します。本当に相続放棄をして良いのか、しっかりと考えましょう。

相続放棄のメリット

最初に相続放棄のメリットを解説します。

相続争いに巻き込まれない

相続に対し、醜い争いのイメージを持たれる人も多くいます。お金が関係すること、仲の良かった人たちも本性をむき出しで話し合ってくるかもしれません。まさにお金の魔力で人が変わります。

他の相続人よりも多額のお金を手に入れたい、今の生活がお金がなく苦しいのならばなおさらです。結婚資金を出してもらった、面倒を見なかった、おまえだけ大学に進学したなど、過去を掘り返してくる相続人もいます。

これに耐えられない人もいることでしょう。心無い言葉の攻撃、それに対し、自分も応戦し昔の話を蒸し返します。傍から見ている人は、故人が浮かばれないと思うことでしょう。争いの火種をのこした故人が否定されるかもしれません。不幸なことです。

相続放棄をすれば、醜い争いでストレスをためることもありません。遺産分割協議で時間を取られることもないのです。中には、相続をあてにしている人もいます。

それは裏を返せば、亡くなることを待ち望んでいる状況ではないでしょうか。悲しいことです。相続をあてにする人は、他人よりも多くを得ようと考えることでしょう。

相続放棄をすることで、そのような人たちと同じ土俵に上がらなくて済みます。

債務を相続しないで良い

遺産はプラスなものばかりではありません。借金による債務、連帯保証人などマイナスの遺産もあります。マイナスの遺産が大きければ、それらの債務の責任を負う必要はありません。

相続放棄をすれば、もとから相続人ではなかったと判断されます。被相続人の債務を肩代わりし、生活を苦しくする必要はありません。マイナスの遺産が明らかに多い場合は、相続放棄が良い方法です。

相続放棄のデメリット

次に、相続放棄のデメリットを見ていきましょう。

相続放棄は撤回ができない

相続放棄は撤回をできません。家庭裁判所に受理をされた後は、撤回はできないと民法で定められています。

多額の負債があることから相続放棄をした状況で、あとから別のプラスな遺産が見つかったとしましょう。明らかにプラスになる状況でも、後戻りはできません。

相続放棄の取り消しや錯誤無効の主張をするといった方法もありますが、認められることは極めて稀です。ほとんどのケースで認められないと思ってよいでしょう。

一度受理された相続放棄を撤回することは、現実的に厳しいです。後から遺産が見つかっても諦めるしかありません。それでもなんとかしたいと思うのならば、一度弁護士に相談をしてみましょう。個人ではどうしようもできない事案です。

全ての遺産を放棄することになる

相続放棄は、すべての遺産を放棄することになります。育ってきた実家など思い出のある遺産もあるかもしれません。それらすべてを手放す必要があります。

なかには、故人が残した自動車の方が新しいから欲しいと思われる人もいるかもしれませんが、相続放棄をすればそれもかないません。

すべての遺産を諦めること、それも相続放棄をするデメリットと言えます。

空き家の管理責任が残ることも

遺産の中に不動産がある場合、相続放棄をしても管理責任だけが残るケースがあり得ます。

すべての相続人が相続放棄をした場合、遺産はすべて法人化され最終的には国庫として引き継がれますが、このようなスムーズな流れにならないことがほとんどです。

まずは、相続財産管理人の選任を申し出る必要があり、これには多額のお金がかかります。相続放棄をした場合で空き家の問題が起きるのは、多額の負債があることからのケースがほとんどです。

価値のある不動産ならば、債務者が相続財産管理人の選任を行うかもしれませんが、その可能性も低いことでしょう。空き家として残り続けます。

この間の管理責任は、相続放棄をした人にあり、万が一その不動産で事故が起きれば、責任を負わなければいけません。

庭の木が通行人の妨げになれば、切りに行かなければ行けないのです。放っておき、その枝が原因で事故が起きれば、管理責任を問われるかもしれません。

これにより、損害賠償を請求されたらどうでしょうか。相続放棄をした以上のお金がかかることも考えられます。空き家がある場合の相続放棄は、安易にしてはいけません。

判断が難しい場合は弁護士へ相談をする

相続放棄がベストの選択なのか、迷うことも多々あります。メリットとデメリットがあるのだから、迷われても当然です。ただし答えを出す期間が定められています。急がなければいけません。

判断が難しいと思う時は、相続問題に精通した弁護士が在籍している仙台にある豊田法律事務所に相談してみましょう。法律の観点から、より良い方法を導き出してくれます。

一人で悩むのではなく、プロに相談して悩みを解決することが大切です。

すべての相続人が相続放棄した後の空き家

相続放棄をすると、すべての遺産の相続権を放棄し、もともと相続人ではなかったものとして扱われます。順位者が存在すれば、その者が相続人です。

しかし、すべての相続人が相続放棄をする可能性もあります。そもそも相続放棄をする理由は、遺産にマイナスなど負債があることで行われるため、誰もそのような相続をしたいとは思いません。

いくら不動産があるからと言っても、建物が老朽化し傷んでいれば、評価額は0円です。マイナスが賄えない不動産を相続しようと考える人は、そうはいません。

その結果、誰も相続をされなかった空き家は法人化されます。

相続財産管理人の選任の問題

法人化された空き家を含む相続財産は、清算を行う必要があるため、相続財産管理人の選任を行う必要が出てきます。空き家で問題になるのが、この相続財産管理人の選任手続きです。

相続財産管理人の選任は、家庭裁判所への請求をもって開始されます。被相続人の債務者が、債務の返還を求めるため、請求を行えば問題ありませんが、明らかに価値の薄い不動産では行う可能性も低いでしょう。

その理由は、手続きに費用がかかる点です。最終的に債務が清算されない不動産の手続きを行っても意味がありません。

それでも「私は相続放棄を行ったのだから関係ない」と思われるかもしれませんが、そこが落とし穴です。民法では次のように定められています。

空き家の管理義務はなくならない

相続放棄をすると、固定資産税を支払う義務はなくなりますが、管理義務はなくなりません。

民法第940条
「相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない」

民法では、相続財産管理人が選任されるまでの間、自分の財産と同じように管理をしなさいとされています。

先ほども説明したとおり、相続財産管理人の選任は、債務者が行わなければ、自分が行う必要があり、それには数十万円の費用がかかってきます。

考えられる空き家のトラブル

空き家なんだから、放っておけば大丈夫と思われるかもしれませんが、万が一トラブルが発生すれば、管理している人の責任を問われます。

・空き家の壁が崩れ通行人にけがをさせた。
・古い分譲マンションで雨漏りが発生し、それを放置したため他の住人に迷惑をかけた。
・敷地内の木の枝が伸び、通行人の目を負傷させた。

こちらのトラブルはほんの一例です。誰も利用しない空き家はどのような事故を起こすか想像がおいつきません。何か問題があるたびに、連絡が来ることになるでしょう。

だからと言ってすでに相続を放棄していることから、自分で処分ができません。裁判所へ数十万円を支払い、相続管理人の選任手続きを行う必要があります。

空き家が増えている原因は、相続放棄から、誰も相続管理人の選任手続きを行わない点も関係しています。知らぬ間に周囲に迷惑をかけている恐れがあることを知っておきましょう。

空き家がある場合の相続放棄

相続放棄を簡単に決断してはいけません。とくに空き家などの不動産がある場合は、相続放棄をすることで、さらなるマイナスを生むこともあり得ます。

相続放棄をすると、何も関係ないと考えられる相続人もいますが、そうは限らないことを知っておきましょう。

それらのトラブルを回避するためには、まず法律の専門家である弁護士の無料相談を受ける方法がおすすめです。簡単に決断をせず、相談をしながら法的により良い方法を見つけるようにしましょう。

まとめ

相続放棄することで遺産を巡る争いから逃れることができます。いつになっても遺産分割がまとまらないなど醜い争いでストレスを溜めなくて済むでしょう。

ただし、すべての遺産を相続放棄をしなければならず、受理されてしまうと撤回することは不可能です。

遺産相続のすべてを放棄したとしても、遺産の中に不動産が含まれているとしたら管理責任だけが残るケースがあり得ます。

そのため、もし遺産に空き家があるとしたら処分するまで管理・修繕等をおこなう必要がああります。空き家を放置したことによって事故が起きれば、責任を負わなければいけません。

相続放棄する際はメリット・デメリットや空き家の管理責任を理解したうえで慎重に判断することが大切です。